高校の頃、一コ上の先輩から聞いた話です。
──先輩(以後Tさん)がまだ幼い頃。夜、ぐっすり寝ていたTさんが急にうなされはじめました。
一緒に寝ていた母親が起きて様子を見ると、Tさんはうなされながら「腕が痛い腕が痛い」と言っています。母親は「ここが痛むのかい?」と腕を揉んであげますが、今度は「足が痛い足が痛い」と訴えます。
言われるがままに腕や足を揉んでいた母親ですが、Tさんは一向に落ち着く様子もなく、更に「お腹が痛い」「背中が痛い」とエスカレートしていきます。さすがに様子が変だと思った母親が灯りをつけてみると…、そこには中年男性のような別人の顔になったTさんが布団の上でもがき苦しんでいました。
仰天した母親ですが、すぐさま仏壇の前にTさんを運び、「ここはあなたの来るような所ではありません 行くべき処お帰りください」というような事を必死に訴え、祈り続けました。その甲斐あって、Tさんも次第に落ち着きをとり戻し、元に戻っていきました。
翌日知った事ですが、前の晩、近くの交差点で交通事故があり中年の男性が一人亡くなっていたそうです。時刻はTさんがおかしくなった時とほぼ同じ。
──この出来事はTさん本人も覚えていなかったのですが、高校生になって初めて母親から直に聞かされたそうです。Tさんは「自分の顔が変わってたなんてシャレんなんねーよ…」とガクブルしていました。