高校生の夏、免許のない俺はナンバーのない単車で、友達を後ろに乗せて、山道をテッペンに向かった。
天気がよく景色が最高だったので、つい時間を忘れ、暗くなってしまった。ライトが暗いので、ゆっくり山道を下っていると、道の左側が杉の巨木が立ち並ぶ地点にさしかかった。
単車を運転する俺の耳に、真っ暗な杉の木の間から、薄気味悪い笑い声のような・・すすり泣き声のような音が聞こえてきた。その音は俺達を追いかけてきているように感じた。
少しずつはっきりと聞こえてくるようになったので、その音のする方向を見ようとした瞬間、後ろに乗っていた友達が絶叫した。友達「うわああああああっ!くるなあああっ!うわああああっ!」俺「なんやあああっ!」友達「みるなあああっ!おまえはみるなああっ!ぜったいみるなああっ!」アクセル全開で山道を下ったが、杉林をぬけるまで、俺は得体の知れない音と友達の絶叫に襲われた。
生きた心地はしなかったが、無事に友達の家に到着した。そいつは汗びっしょりで、目は腫れて真っ赤だった。
何を見たのか聞いても言葉になってなかったので、家に帰った。後日に聞いても「クチでは説明できん」とか「知らん方がええ」とか言うので、結局わからずじまいだが、密教やら修験道やらの霊山?やったってことはずっとあとで知りました。