小学校卒業の頃、学校で肝試しをすることになった。
クラスの担任も暗黙って感じで、一クラスまるごと(40人)集まった。当然幹事つうか仕掛け組みがいて、演出も小学生なりにしてたんだけど。
くじを引いて四人くらいで一組になって、指定ポイントを回れみたいな。季節は冬だったから、集合時間の五時にはもう薄暗くなってた。
とりあえず自分らの教室に集まって、電気を消して懐中電灯で怪談を話した。で、準備ができたから一組目どうぞー、って感じに肝試し開始。
ルートはうろ覚えだけど、音楽室(ラジカセでお経みたいな何か流してる)、図書室、他学年の教室いくつか、多目的ホール、PCルーム(PCなかったけど)、長い廊下を渡って体育館、中庭、校内ぐるっと回って玄関、戻るって感じ。各教室にはいろいろ仕掛けがしてあったみたいで、先に書いた音楽室の仕掛け、他学年の教室では机の上に花瓶が置いてあったり、中庭の銅像に白い布がかけてあったり、体育館ではピアノが鳴ってたり。
時間が時間だったから校舎内は完全消灯ってことで真っ暗だった。懐中電灯を持って歩いて、指定ポイントから紙を取ってくるとか、置かれている本の指定ページを読んでくるとかそういうルールだった。
今思えば子供にしちゃなかなか凝ったものだったと思う。で、自分の番になってきゃいきゃい騒ぎながらぐるっとまわって、何事もなく、というか無事に教室まで戻ってきて、幹事にポイントの報告をした。
報告がてらダメ出しみたいなこともしたくって、いろいろ話した。「音楽室さぁ、ベートーベン見えないと怖くないよ」「銅像、なんかよくわかんなかった。
布?」「花瓶は可哀想だよ、明日あそこに座る人が可哀想」とか、ふざけてる感じで言い合ってた。で、俺も負けじと感想を。
「体育館さ、なんで電気ついてんの?怖くないじゃん。ピアノも音楽室と同じだし」そしたら、幹事が「えっ?」って固まる。
「電気なんかつけてないよ。消灯だし、つくわけないじゃん」うちのグループも「えっ?」って固まる。
そのとき、ひとつ後ろのグループが戻ってきて、幹事が聞いた。「体育館、電気ついてた?」「真っ暗だったよ。
段差が見えなくて怖かった」結局誰もつけてないしつくはずのない電灯がついてた、ってことになるんだけど、うちのグループ以外は気にしてないみたいでそのまま流れた。後日、友人と三人で学校から帰る道で。
「俺さぁ、PCルームでなんか白い影見ちゃった。」一人がそんなこと言い出して、俺は面白がって話を聞いた。
「なんか、白くて長い影。近寄って来たから逃げた」「マジで?それ幽霊じゃねぇの?すげー」「すぐ逃げたんだけど、なんだったんだろうなあれ」「絶対幽霊だって、学校とかっているじゃん」そしたら、黙ってたもう一人の友人がつぶやくように言う。
「それ、ついてきちゃった。俺が帰るとき」聞けば、彼が肝試しから帰るとき、妙な白い影が道を這うようにしてついてきたのだとか。
怖くて大急ぎで帰ったらそれ以降見ることはなかったそうだけど。いろいろ苦い思い出を残した小学六年生の冬でした。