小さい頃よく熱をだして寝込むことが多かった。
熱でうなされると、毎回おなじ夢を見て目が覚める。そいつが怖くて怖くて、いつも布団の中で泣いていました。
またあいつがくる、おびえながら眠りにつく。その夢は「のっぺらぼう」山の形のような輪郭、髪の毛もなく、そしてどういうわけか柔道着みたいな着物を着ている。
2段ベッドの上に寝ていたんだが、そいつはいつも決まって天井を歩きながら向かってくる。飛び起きてフラフラと泣きながら親のもとへ行く。
親父は「大丈夫か?」といわず卑屈な笑い声を上げながら「夢に決まってんじゃねーか(笑」といわれた。うちの親父はちょっとおかしい人物で、普段から抱き寄せるという事をしない人で子供心にすごく傷ついた。
しばらくうなされるたびに、「のっぺらぼう」は現れ、おどかしに来た。ある日、また熱をだした。
「今日もくるのかな?」とか考えつつ寝りについた。明け方近く、汗びっしょりで目が覚めた。
布団から起き上がって半分寝てる状態で、ボーとしてた。ぱっと見たら「のっぺらぼう」が天井を歩いてこっちへ向かってきた。
ふざけんな!と思って、のっぺらぼうの顔面におもいきりパンチを入れた。顔をに拳がめり込む感触があった。
のっぺらぼうは逃げるようにかき消えていった。小学5年の時だった。
それ以来、のっぺらぼうが夢にでる事はなくなった。