僕には霊能者もどき?の親戚がいる。
通称「みちかさん」。今現在北海道在住である。
今度の話は、どちらかというと僕の体験談である。大学を卒業して就職した後、いろいろあって会社を辞め、僕は北海道のA市に住んでいた。
みちかさんは、たまたま用事でA市の近くまで来たので、隣の市で一緒にお茶をしようということになった。時期は冬。
その時の彼女の用事は、ある一家をみることだったが、その話は別の機会にしよう。その話を聞いていた時、みちかさんが、「アレ・・・。
」っとあごで外を見るように促した。見ると向こうの通りに高校生くらいの白人が歩いていた。
「なんなのかなあの子。やばいかも。
」全然やばくない。ただ横断歩道を渡っているだけだ。
「白人の子が珍しいんですか?」札幌や海沿いの都市などを除けば北海道には確かに外人は少ない。「そうじゃないって。
確かに珍しいけどさ。ちらっとしか見えなかったけどね。
あの子やばいもんが憑いてる。」やばいもの?まさか、白人にも?宗教も違うだろうし、いくらなんでも。
僕は彼女の発言が信じられなかった。「何その顔?疑っている?」「いえ、別に。
」「あんた英語少しできるよね?今度会ったら、話しかけてごらんあの子に。」は?僕はますます疑念を抱いた。
白人というだけで英語が通じるわけではない。ロシア語なんてしゃべれないし。
「話すチャンスなんて無いでしょう。僕はそんなにこの市に来ないし。
英語も通じるかもわからないし。」「そうね。
」と彼女は少し笑って、「でも・・多分また会うよ、あんたは。」とみちかさんは妙な事を言うのだった。
そんな話をすっかり忘れていた頃、たまたまちょっと必要な本を隣の市まで買いに行った時、彼がいた。さすがみちかさん。
胡散臭いだけのことはある。彼は本を探しているようだった。
みちかさんに言われたのもあり、オージーかアメリカ人ぽかったので最初は英語で声をかけてみた。「Hello? Is there anything I can do for you?」「Oh, Yes! Im jsut looking for some books on Japanese religion.」僕もわからないので店員に聞くと「そこですよ。
」と教えてくれた。そしたら、日本語で「あ、そこか。
どうも!」と日本語を喋った。驚いた僕は、日本語でいろいろ聞いてみた。
彼はChris(仮名)と言い、アメリカのU州出身でキリスト教系のXXXX教の布教活動で日本に来ているとのこと。彼は僕にお礼を言って足早に去っていった。
特にあやしい感じはしなかった。彼の手の甲に無数の引っかき傷があったこと以外は。
2回目に見たのは、A市からちょっと離れた森の近くだった。僕は雪のせいでゆっくりと車を走らせていた。
彼は何やらビニール袋を手に持っていた。彼とは反対側の方向で走っていたが、目があったので、軽く右手をあげて挨拶した。
ところが、彼は微笑みもせずジッとこちらを睨んでいた。理由はわからなかった。
3回目に見たのはA市の横断歩道だった。そのときはちょっと話した。
前回のことを聞こうと思ったが、「一度教会の方に来ませんか?」といきなり尋ねてきた。僕は宗教関係に一切興味はないので断ったところ、「じゃあ個人的にでも。
」というので、「今度ね。」と家の電話番号を教えておいた。
紙を受け取ると「See you again!」と別れを告げたが、目はまったく笑っていなかったのを覚えている。彼の約束など別にどうでもよかったが、しばらくすると、家に電話がかかってきた。
「もしもし?」「あ、XXさんですか?私、Anna(仮名)と言います。Chrisさんに電話番号を教えてもらいました。
是非一度教会に来ませんか?英会話教室もやってますし。」「えっ、Annaさんって?Chrisはどうしたの?」「彼はアメリカに帰りました。
」「???何で?」彼女は理由を言わなかった。彼女の電話の様子から、僕にかけたのはただの布教活動の一環のようだった。
気になるので教会に一度顔を出した。そこには、Annaさんともう一人の若い白人、日本人の神父さんだか牧師さん、あとは日本人の信者の人たちがいた。
適当にお祈りや英会話教室をやり過ごした後、僕は日本人の神父さんだか牧師さんだかにChrisのことを聞いたが、「アメリカが恋しくなった」と言う。僕は彼の態度に疑問持ったので、帰り際Annaさんに問い詰めた。
「Chrisは何で帰ったの?ホームシックじゃないでしょ?」彼女は最初躊躇したうおだったが、小声で答えてくれた。だが返答は英語で返したきた。
「彼は狂ってるわ。私達、彼とうまくやっていけなかった。
2週間前の夜、私は教会に忘れ物をしたから取りに行った。そしたら、どこかで猫が激しく泣いている。
裏庭にいったら、猫の首を絞めている彼を発見して、『一体何やってるの!?』と聞いたの。」「そしたら彼、『こうするのが一番いい方法なんだ。
僕にとっても、やつらにとってもね。』って言うの。
あの青白い顔でね。後でわかったんだけど、もう何十匹も殺してたみたい。
裏庭に猫の死体とか骨とかが一杯埋まってたから。」「私はとても怖くなって逃げた。
すぐ教会のWさんに電話したの。『Chrisが裏庭で猫を殺してたっ!』って。
」そして一週間後、彼はアメリカに帰されたらしい。懺悔するよう促されたが、彼は頑なに拒絶したそうだ。
Annaは最後にこう話した。「私はChrisに聞いたわ。
何故猫を殺すのかと。彼はこう答えた。
『選択の余地はなかったんだ。やつらが大嫌いだったから。
』猫が嫌いなの?『猫が嫌い?猫は身代わりだよ。』『俺は敬虔なXXXX教徒だよ?この意味わかるだろ?』『けどそれも時間の問題だったかもな。
』」Annaが語ったChrisの発言。「This is the best way! For me and em!!」Annaが語った時、最初僕は「em」が「猫」だと思っていた。
可能性は低いが、もしあれからChrisと個人的に会っていたら・・・。みちかさんにこの話をすると、「ほらね。
」と返ってきた。なにが”ほらね”なのかは聞かなかった。