子供の頃からいろいろと見えていた「モノ」が普通じゃない「モノ」だと気付いた時の話。
僕が小学校に入った頃だったと思う。原因は記憶が曖昧で覚えていないけど2、3泊の入院をした時、それを見た。
夜、もう部屋の明かりを落して静まり返っていても昼間からずっとベッドに横になってばかりいたせいか全然眠くならないでいた僕は4人部屋の病室を何の気なしに見回していた。病院の駐車場の明かりが窓からぼんやりと室内を照らしてだいたい部屋の中に何があるか判別できるくらいの暗さ。
それは隣りのおじいさんのベッドの側に立っていた。輪郭に凹凸が少なく、のっぺりとして厚みも感じられない。
それでも、頭、肩、腕、とヒト型をしているのがわかる。全身が薄く青い光を発しているように見える。
眠っているおじいさんを見ているのか、ぴくりとも動かない。が、その青い影は僕が見ているのに気付いたのかゆっくりと振りかえり、異様に大きい目を僕に向けた。
大きな目に穴を開けたような真っ黒な瞳がぽつんとある。そしておじいさんを指差してこう言った。
「もうすぐだよ」その青い人影はまたおじいさんを見つめるように向き直った。僕は直感的に気味の悪さを感じて看護婦さんを呼ぶためにベッドを抜け出しナースステーションに向かった。
当直の看護婦さんを呼んで部屋に帰るとその青い人影はなく、おじいさんも静かに寝息を立てている。で、結局僕が退院するまでおじいさんに何事もなかったけど今でもごくたまに、そののっぺりとした青い人影を見る。
たぶん、あちこちにいるんだと思う。一応霊っぽいのを見る事ができる体質みたいだけどそれはなんか異質で、ちょっと、気味が悪い。