3月のある寒い真夜中、コンビニの狭い通路での事。
商品を物色するためしゃがんでいた、私の後ろで鈴の音が鳴った。私は咄嗟に体を起こし、通路をあけた。
「?」しかし私の後ろには誰もいなかった。気のせいだったのか?私は店内を見渡した。
店内にはカウンターに店員が一人いるだけで、他に客は私だけだった。「聞き違いかな?」私は再度、棚にある商品の物色を始めた。
「ちりん、ちりん…」再び鈴が鳴った。今度は、奥のドリンクコーナーから聞こえてきた。
私は慌てて、辺りを伺った。が、当然誰もいない…。
「ちりん、ちりん、ちりん、ちりん…」鈴の音はゆっくりとドリンクコーナーの前を移動しながら、さらに奥の生鮮食品置き場へと動いていった。「………」と、音が止んだ。
私は、商品の物色を続けた。2Lのお茶のペットボトルを籠に入れ、今夜の夜食を仕入れる為、お弁当売場へ私がいこうとしたその時、「ちりん、ちりん…」鈴が鳴った…。
今度はカウンターの前を、ゆっくりと出口方向へと向かって…。それにあわせるように、今まで本を読んでいた店員がその音の主を目で追うかのごとくゆっくりと、首を動かしていた。
「なんか、変な音がしてますね…」私はレジを操作している店員に向かって話しかけた。彼は下を見たまま返事をしない。
「●●●●円です。」気まずい雰囲気に、私は代金を支払いその場を足早に立ち去った。
出口の自動ドアの前に行ったき、店員が小声で言った。「この時間は、いつものことですから…」私は返事もせずに店を出た。