消防のころ、クラスにY伊藤という奴がいた。
奴は背が小さいせいか、からかわれる対象になりやすく、俺もたまに帽子とか上履きをとりあげて他の奴にパスしたり(よく消防がやるやつね)授業中にちぎった消しゴムをぶつけたりしてた。でもそんなイジメってほどでもなく、普通に遊んだりすることもあった。
ある日、昼休み恒例のグラウンドでのドッジボールが予鈴で終わり、俺はボールの片づけがあったので、みんなより少し遅れて玄関に駆け込んだ。そのときに、ドッジには参加していなかったY伊藤とすれ違った。
俺は「もう授業始まるよ。」と振り向いて声をかけた。
すると、Y伊藤は、ブツブツと何か言ってそのまま学校から出て行った。俺には、「余計なこと言うな。
」と聞こえた。普段のY伊藤の口調じゃなかったので、違和感を感じた。
自分が授業遅れて怒られるとイヤだから、急いで教室に向かった。教室に入ったら、Y伊藤がいた。
「え??」と思いながら、Y伊藤に、「さっき玄関から出て行かなかった?」って聞いたら、「ここにいたよ。」とY伊藤が答えた。
俺は全速力で最短ルートを着たので、先にY伊藤が着けるはずがない。納得いかなかったけど、見間違えだと思ってその日は気にしなかった。
その日の夜、寝ていたら、額をコツンと叩かれた。指でキーボードを叩くように、そんなかんじで叩かれた。
俺は「うわぁー!」と叫んで跳ね起きた。自分以外は俺の部屋にいないはずだから、死ぬほど怖かった。
事実、周りをみても誰もいなかった。あまりにも怖いので、布団を頭からかぶった。
胎児のような姿勢をとり、そのままじっとしていた。跳ね起きてから2分くらいたったのかな、そのとき、すごい衝撃が襲ってきた。
頭の右前頭部から、左耳の下あたりを、透明なジェット機のようなものが貫通していったようなかんじ。一瞬だったのだが、右耳から「ゴオオオ!」とすさまじい音が響き、左耳に抜けていった。
体全体が一瞬ビクン!と跳ねた。もうなにがなんだかわからなくて、泣きそうになっていたときに、耳元から、「余計なこと言うな。
」と聞こえた。結局その日は朝まで寝れず、親に具合が悪いと言って学校を休んだ。
次の日に学校に行くと、Y伊藤はいなかった。「昨日おまえが休んだ日に転向していったよ。
」友達が教えてくれた。いつもとかわりないY伊藤が壇上から別れの挨拶をしたらしい。
あの体験はなんだったんだろう・・。実話だからオチがないけど、ほんと怖かった。