かつての彼氏(Y)から聞いた話。
大阪市内で幽霊がでることで有名な廃病院があった。ある夏の晩、Yは仲間数人とそこへ肝試しに行くことに。
病院は車の通りの少ない道に面していてフェンスで囲まれた5階建てくらいの建物で、実際現場に行くと入り口も分からないくらい暗くて汚れた廃屋だった。さすがに怖さを感じたが、みんなで昼間に入ったこともあり、結局、Yたちはジャンケンをして負けた順に1人ずつ病院の中に入って窓から手を振ることにした。
一番最初に行くことになったのがYの2歳上のA先輩。A先輩は怖がりなタイプではなく、笑いながら「上まで行けたら何かおごれよ」なんて言いながらフェンスを越えて中に入っていった。
そして数分後、3階の窓際に動く人影が見えたので、みんなで下から「おーい」と声をかけてみた。すると人影が窓に近づいてきたので「A先輩~」とみんなで手を振るんだがA先輩は顔を出さずすっと中に消えていった。
「窓が開かなかったんじゃないのか」「やっぱりあんまり怖くないんだな」とYたちが話していた直後、「おーい」とフェンスの向こうからA先輩の声が。みんなびっくりして「A先輩帰ってくるの早いですね」と言うと「いやー、あんまり暗くって途中までしか行けなかったよ」とA先輩。
それでも「だって、さっき上からのぞきませんでした?あの、3階の窓から・・・」とYが指さすと、じーっとYたちを見ている帽子をかぶった真っ白な顔をした男の子の姿が。でも、その病院の窓は子どもなら絶対のぞけない高さ。
なのにその男の子は顔を出して下にむかっておいでおいでと手招きをするではないか。もうみんなぞっとしちゃって一目散にその場を逃げ出し、そのまま家に帰ってしまった。
翌日、Yたちは廃病院には俺達のほかに肝試しにきていた連中がいた、と結論づけた。しかしA先輩だけその日から学校を病欠してしまった。
3日も休むもんで、心配になったYと肝試しに参加したBがA先輩の家まで見舞いに。家にいたA先輩の母親に容態を聞くと、先輩はあの日以来、部屋に閉じこもってしまったという。
不審に感じたYとBが家にあがりA先輩の部屋に入るとA先輩は夏だというのに窓を閉め切ったまま部屋にふとんにくるまってじっとしている。顔もどす黒く、生気もなく疲れ切った様子。
「どうしたんですか、A先輩?」とYが聞くとA先輩は「お前達のところにもきてるやろ?」と一言。「え?何が来るんですか。
何にも来ませんよ。なあB」とYがいうとBもうなづく。
しかし、A先輩は真剣な表情をして「あのな、しらん男の子がおれんとこ毎日くるんや。“お兄ちゃん遊ぼう”ってベランダの窓の外から手招きするから、俺は“お前となんか遊びたないわ!!”って追い払うんやけど、毎日来るから、寝られないんだ」と泣き出しそうな声で言ったとたん「ああ、また来た!おまえらも見えるやろ!!??あいつや!」と大声で窓を指さすもんだからびっくりしたYもBも部屋を飛び出してしまった。
A先輩はその後も学校へ来ることができず、原因不明の熱病で亡くなってしまったそうです。