富山から東京に引っ越した新婚夫婦のKさんとT子さんは某年七月のある夜中、玄関に人の気配がして泥棒だと思って慌てて電気を付けたが誰もいなかった。
しかも翌朝玄関に海が近くにあるはずもないのに、なぜか潮の香りがする水溜まりがあった。2人はそれを見て真っ青になり、Kはモップで拭き取ったがソレは3日たっても乾かずぼたぼたと海水をたらし、Kさん不安と不吉な予感のあまりになってソレを焼却炉に投げてしまった。
その後再び夜中に玄関に人の気配がしたがまたKは気のせいだと思ったが、それは違った…なんと白いワンピースの女が立っており、全身海水にぬれたままKを睨み付けていた。しかも手に小型の濡れた骨壺を持っていた。
『M子!』Kさんはそう叫んだ途端失神してしまった。実はKさんはT子さんと結婚する前にM子さんと交際してたが、M子さんが妊娠するといきなり気が変わって、それも『俺はまだ身軽でいたいんだ!』と無責任な発言をしてM子を捨て、T子さんと結婚して東京に来てしまった。
裏切られたM子さんはのちに富山湾に飛込んで自殺してしまった。そして浮かばれぬM子さんの霊がKさんの前に現れ、さらに胎児の魂が入った小さな骨壺を渡そうとする…そして、毎晩のようにM子の霊が現れては、その骨壺をKに渡そうとし、Kは隣に寝ているT子を起こそうしたが、いくら起こそうとしてもT子はなぜかうんともすんとも言わず眠り続けており、その恐怖劇が一週間続いたある朝、Kは隣りに寝ているT子を起こそうとしたが、なんとT子はすでに冷たい死体と化し、しかも彼女の遺体は海水にぬれていて潮の香りをただよせていた。
医者によればT子の死因は心臓麻痺と判明し、後にKは富山に帰ったがその恐怖劇はまだおさまらず、ついにK自身も精神に異常をきたして精神病院に入院してしまったらしい。