小さい頃の話。
従妹と港祭りに行った帰り、電信柱の下に知らないおばさんが黙って立っていた。そのおばさんは黒っぽい赤のワンピースを着ていて塀の方を見てうつ向いていた。
あまり気にはせず歩いていたが、そのおばさんの横を通りすぎるとき妙な臭いがした。魚っぽいようななんとも言えない臭い。
釣り好きの父の車の中の臭いに似ていてそれをもっと濃くしたような。「風?」従妹が手を強くにぎりながら呟いた。
確かにビュウウと音が聞こえる。「あ」と従妹が泣きそうな声をあげておばさんの顔を指差した。
おばさんの目と鼻が無い。そこにはただ穴だけが開いてた。
そこからビュウウと音がする。「アワーウワー!」と駆け出す従妹。
自分も慌てて逃げ出した。その後はよく覚えてない。
気付けば二人布団で震えてた。大人は震える自分たちに何があったか質問してきたが怖すぎて答えられなかった。