大きなマンションに住んでる友達がいるんだけど、そいつの家に遊びに行くたびに気味の悪いことがあった。
友達は20階建ての18階の部屋に一人暮らしをしてて、当然そこに行くにはエレベーターを使う。インターフォンで玄関のドア開けてもらって、入ってすぐのエレベーターに乗るんだけど、「18」のボタンを押して「閉じる」を押すと普通はすぐ閉まる。
それが時々、閉まりかけて途中で止まり、また開くようなことがあった。あれっ?と思って外に顔を出してみるけど誰もいない。
変だなと思いながら、また「閉じる」を押すと今度は閉まるんだけど、18階じゃないところでエレベーターが停止してドアが開いたりする。外に顔を出すけどまた誰もいない。
こんなことが1度や2度じゃなかった。さすがに気持ち悪い。
他の住民とたまたま乗り合わせた時も同じことがあった。そのおばさんは慣れてるのか、押してない階で止まった時もすぐに「閉じる」を押していた。
「故障ですか?」と聞いたら、「ええ、時々なるのよ」とのこと。そのあと友達の部屋にいって「エレベーター故障してるのな」と言ったら「ああ」と言っていた。
それから多分半年くらいして、友達の部屋に行くのに彼と一緒にエレベーターに乗った。「18」を押して「閉じる」を押したら、閉じきる寸前にピタっと止まってまた扉が開いた。
すると友達は「誰か乗って来たな」と言いだした。「なんかな、変な噂があってな。
誰か乗って来るんだと」おいおい。故障って言ってたのに。
そうしてると時間が来てドアがまた閉じた。思わず壁際に寄ってしまった。
「でたらめな所で止まって開くのは?」と聞くと友達はちょっとためらってから答えた。「でたらめっていうか、14階だろ」ゾッとした。
全部は覚えてないけど、前回は確かに14階で止まった。「なんで14階なのか知らないけど、降りない方がいいよ。
そこで降ろそうとしてるみたいで嫌じゃん」二人だけのエレベーター内なのに、そんな話を聞かされると鳥肌が立つほど他の誰かがいるような嫌な感じがする。上昇音だけが響いて、息がつまった。
やっとドアが開いて、降りながら友達が言った。「そのせいか14階は殆ど人が住んでない」俺も降りようとして「14」が点灯してるのに気が付いた。
「おい」と言ったらハッとした顔をして友達は飛び込むようにもどってきた。「冗談きついわー。
いま素で気付かんかった」その夜、一人で帰るときに18階のエレベーターの前に立って↓ボタンを押すと、その横の現在の階数表示が14になっていた。気持ち悪くて階段で降りることにした。
でもエレベーターのすぐ横だから、どのみち14階のエレベーター前に出る。一度戻って友達に送ってもらおうかと一瞬考えたけど、いくらなんでも情けない。
「ヨッシャー!」とか独りごと言ってみて「いっそ14階からエレベーターに乗って降りたろかい」とか考えてると、割りに気が強いほうだからなんでもない気がしてきた。14階についたけど別に照明が暗いわけでもない、ごく普通の階。
エレベーターがとまってたので案外あっさり乗った。「1」を押して「閉じる」を押す。
何事もなく閉まって下降しはじめた。ちょろいちょろい。
とか思ってるとその途中で気がついた。ついさっき18階に呼んだエレベーターがなんで14階にとまっているのか。
1階まで生きた心地がしなかった。