昔俺がアルバイトしてた某有名カラオケ店での話
そこには厨房があるんだが
夜中になるとだれもいないのに物音がしたり
視線を感じたりするそうだ
これは何人かのバイトが証言していた
残念ながら俺は遭遇できなかったわけだが
話はあと二つある
一つは白い着物をきた女の話
そこの店は廊下の通路が円形にループしたつくりになっている
この廊下を白い着物をきた女が歩いているそうだ
この噂は昔からバイトたちの間にあったらしい
先輩の先輩はその話について好奇心がありながらも
懐疑的だった
しかし彼女はある日のバイトのときに
カウンターで客に尋ねられたそうだ
白い着物をきた女の人が廊下をぐるぐるまわってるけどなに?
もう一つの話
そこの店にはもう一箇所バイトに恐れられている場所があった
それは18番目の客室
18号室は部屋の広さも不十分で
設備もよいものは使われていない
カップルや少人数の客を主に通す部屋だった
開店前の掃除にこの部屋にはいると
確かに気味が悪い
なにが不気味なのかといえば壁の絵だ
壁一面に大きな女の絵が飾ってある
黒いドレスを描いた紙面はところどころはがれ
瞳はだれかのイタズラによって黒く塗りつぶされている
ある日おれは例によって開店前の清掃をしていた
1号室から順番に部屋をまわって掃除をしていく
14号室あたりを過ぎたとき
廊下の先に人影がみえた
掃除を適当にすませながら俺は最後の部屋に入った
とたん寒気がした俺を見つめている
女は壁の絵だ
当然といえば当然だった
18号室に入っていったそれは
或いは白い着物のようなものをきていたのかもしれない