よく晴れた日だった。
とても穏やかな陽射しに、ここのところの鬱状態から脱却出来そうだった。自分の部屋の窓は、サッシと障子戸の二重になっているのだけど、いつも閉めきっている。
その日もいつもの様に閉めきっていて、障子からは柔らかな光が射し込んでいた。気分が良くなり、歌を口ずさんでいると、裏の家の窓の開く音が響いた。
ガラガラガラ、と。すると、何か、物音がする。
天気もいいし、布団でも干すのかと思った。しかし、物音は近くなってくる様な・・・ふと、窓を見ると、柔らかな光と共に目に射し込んできたのは、人型のシルエット。
その人影は網戸を開けた。そして、サッシを開けようとしている。
掌を張り付け、スパイダーマンの様なシルエット。ただ、そこにいるのは正義のヒーローではない。
恐怖で混乱し、取り敢えず家族を部屋に呼んだら、人影は消えていた。そして、家族が屋根へ出て様子を見に行ったら、人影は逃げる様に低姿勢で裏の家の方へ戻っていった。
早朝に窓を開けてみた。サッシには露がおりていた。
手形がべっとりとついた所以外。自分の被害妄想ならば、どんなに良かった事か。
朝食の際、警察に通報するか否かで、簡単な家族会議をした。実害が無いのと、色々と面倒臭いという理由で、通報はやめた。
ご近所には一応、一部始終を話した。今はただ、気持悪さで一杯。
自分の部屋にもいたくない。そして、少しの物音でも気になり、留守番をする時も気が気でない。
霊的なものより、生きた人間の方が怖いと思った。