たしか、小学校6年くらいの話。
中のいい友達と3人で、近所の山にキャンプに行った。山の中に入っていって、少し広くなったような場所にテントをはった。
持ってったパンやおにぎりを食べたり、好きな女子の話をしながら、あっという間に夜になった。3人で川の字になって寝て、どんぐらいたったろうか。
僕はふと目を覚ました。友人は二人とも寝ていて、あたりはシーンと静まり返っている。
「・・・・・ふ・・に・・・・か・・・・」何かが聞こえた。どこから聞こえてくるのか、しわがれた、地の底から響くような声。
「・・・・のふ・・・に・・・とは・・・か・・・」声は続く。友人たちは、起こそうとしても、死んだように寝入っている。
僕は声の正体を確かめようと、寝袋から抜け出すと懐中電灯を持って恐る恐るテントの外へ出てみた。月明かりに照らされて、辺りは良く見えたが、何も入る気配は無かった。
僕が、ほっと胸をなでおろし、テントに戻ろうとした時。「ジャッ!!」何かテントの中で、奇妙な物音がした。
慌ててテントに戻ると、今まで僕の寝ていた場所が、大きく、切り裂かれていた。まるで、地面からなにか鋭い刃物で切られたようだった。
僕は慌てて、また友人を起こすと、今度はすぐに目が覚めてくれた。二人に起きたことを話すと、青ざめた顔になった。
二人は同じ夢を見ていたらしい。夢の中には、ボロボロの鎧を着た、侍のような男が出てきて、こちらをじいいっと見て何か言っていたらしい。
「もののふの うえに のるとは なにごとか」そこは、昔の山城跡で、幾度か合戦があったとあとで聞いた。