洒落にならないな・・・と今でも思うのが、身内の霊の話。
祖母が他界したのはもう20年前になるが、その数日後に、叔母のところに祖母が現れたという。叔母は、いわゆるキャリアウーマン人生を選択した女性で、会社勤めの一人暮らし。
独居にて、夜は和室に布団を敷いて寝る。その和室からまっすぐ伸びた廊下の突き当たりが玄関。
玄関の明かりだけはいつも一晩中つけっ放しだったそうだ。その晩、叔母は何故か寝室の障子をわずかに開けて寝入り、夜中目を覚ますと足元に明かりがあった。
「あ、そうか、障子開けっ放しで。玄関の明かりが入って来てるんだ」・・・と。
これはその通りだったが、ふとその足元に目をやると、玄関の明かりの色合いがいつもの色と異なり何となく青白い。あれ、と思い起き上がって金縛りになった。
布団の上に上体を起こしたかっこうで叔母は固まった。玄関に祖母が立っていたのだ。
祖母は、一直線の廊下を、すーっと叔母のほうへ近付き、自分が祖父(夫)より先に逝くのでひどく心配である、祖父のことをどうか宜しく頼むと何度も手を合わせて叔母に頭を下げたという。叔母は金縛りながらぼろぼろ涙を流し、「大丈夫、お母さん、大丈夫、お父さんのことは私が全部面倒見るから」と答えた。
すると、祖母は安心したのか、またすーっと後方(玄関)に後退し、そして、玄関の明かりのすぐ下でふたたび合掌し目を閉じると、ゆっくりと、玄関上の電灯の中に吸い込まれるように消えたという。