学校の近くに古い空き家があり、子供たちの間でお化け屋敷のように言われていました。
木造の家で屋根や壁の塗料が剥がれていて庭の草も手入れがされていませんでした。それでも鍵が掛かっている事もあり入った人はいなかったようですが、悪戯されたのかガラスが割れていたり落書きがされたりしていました。
友達でその家の前を通るのが怖いという子もいましたが、私はただの古い家だと思っていたし怖いという感情はありませんでした。一見お化け屋敷のような家で、そのために怖がられてはいましたが、怖い噂はひとつもなかったのです。
友達の家に遊びに行き、すっかり遅くなってしまったある日の事です。遅くなってしまったと言っても、夕方7時頃だったと記憶しています。
私はその家の前を通りました。すると空き家から小さな音が聞こえてきたのです。
よく耳をすませてみるとテレビかラジオのような音でした。あれ?誰か住んでいるんだろうか?と私は思いました。
お化け屋敷という噂だけで人が住んでいないと思い込んでいたけれど、もしかしたら人が住む家だったのだろうかと。割れた窓から何か光のようなものが見えました。
白や赤などカラフルで、暗い部屋でテレビがついていたらこんな感じだろうなと思いました。窓はでこぼこの模様がついたガラスだったのではっきりとは見えませんでした。
なんだ、誰か住んでいたんだ。家の中の人がテレビを見ているんだな、とそのときは思いました。
ですが次の瞬間私の背筋はぞっと凍りつきました。窓の枠の横に壁が剥がれて壊れたのか、小さな穴があるのですが、そこから何かが見えているのです。
人の目でした。私はその目と自分の目が合ってしまった事にぞっとしました。
いつの間にか怖くて走り出していました。その後学校の友達に話したのですが、そのうちに噂は脚色されて広まり、同じような体験をしたという人が増えていきました。
私は怖くて遠回りをして家に帰るようになりました。それから何度か通らなければならない時もありましたが、変な物は見ませんでした。
私が見たのは一体なんだったのでしょうか。