俺が高校行ってた時の事。
俺の高校には男子寮があったんだけど、県外から来てる生徒は大抵そこに入ってた。何度か改修やら増築やらされてる結構年季の入った建物。
その寮に入ってた友達の話。部活にありがちで、上下関係とかかなり厳しくて、先輩の言う事は絶対って風潮があった。
その日も友達は相部屋の先輩から頼まれた大量の洗濯物を、屋上に干す作業をしていた。時間はそろそろ日付が変わろうとしていた頃。
不意に後ろから「ガシャッ、ガシャガシャッ」っとゆう音がしたので、びっくりした友達は思わず後ろを振り返った。そこには転落防止の為に張ってある金網をしきりに揺らしている5、6歳位の体が半透明に透けている男の子がいたそうだ。
友達からは男の子の後ろ姿しか見えず、顔を確かめる事は出来なかったのだが、友達は一瞬で「やばい!!」と思ったそうだ。寮の先輩達から、「うちの寮はよく出るぞ」等とよく聞かされていたし、見たと言う人も後を絶たなかった。
友達本人も霊感体質で、俺もよく不思議な体験を聞かされていた。その友達が、瞬時にこの世の物では無い雰囲気を読み取って、背筋に寒いものが走ったそうだ。
その間にも、半透明の男の子はしきりに金網を揺らし続けている。心臓の鼓動は割れんばりに速くなり、友達は恐怖のあまり動く事が出来なくなってしまったそうだ。
おまけに声も出ない。友達は馬鹿みたいにその場に突っ立って、じっとその男の子を見るしかなかった。
「ガシャッ、ガシャガシャ」金網の揺れる音だけが誰もいない屋上に響く。すると不意に男の子がこちらを振り返った。
いや、正確には振り返るか振り返らないか位の所で男の子は突然消えてしまったそうだ。友達は呆然とそこに立ち竦んで、しばらく何も居なくなった金網を見つめていた。
と、その時、突然友達は後ろから手を引っ張られて、びくっとして振り向いた。そこには先刻の男の子と思しき奴が、半透明な顔で友達を見上げていたそうだ。
その顔は、溺死者の様にぶくぶくに膨れていて、半透明ながらもはっきりとその大きな輪郭が見て取れたそうだ。「そこから先は覚えてない。
俺気絶してたらしいから。」とその翌日友達は学校で話していた。
屋上で倒れている所を別の寮生に発見され、その話を聞いて慌てて駆け付けた寮監に部屋まで運ばれてから目を覚ましたそうだ。心配そうに見つめていた寮監に先刻の事を話すと、「ああ、また出たかぁ。
その子俺が学生の頃からよく出てたらしいからなぁおまえ霊感体質か?」と言われたそうだ。寮監の話では、何十年か前にあった大水害の時、俺の高校の校庭には数十体の水死体が流れ着いていたそうだ。
その中にはいくつかの子供の死体も混ざっていたそうで、丁度今寮が建っている辺りに仮の安置所を作って、そこに纏めて安置していたらしい。とまぁこれが俺が友達から直接聞いた話です。