友人が家庭教師をしている子のおばーちゃんの話です。
そのおばーちゃんの家は旅館をやっているそうなのですが、あるとき従業員にお金を持ち逃げされたそうです。それから数年後、警察から電話がかかってきて、その従業員が海に飛びこんで自殺したのだが、身寄りも無いし、働いていた其方で葬式でもやってくれないかというような内容だったそうです。
もちろん、金を盗られた相手ですしそんな義理はありません。おばーちゃんは断りました。
しかし、その夜に寝ようとすると何となく嫌な予感がし眠れません。おばーちゃんは、死者の霊が刃物を嫌うという話を聞いていたので、おまじないのつもりで枕元に包丁を置いて寝たそうです。
そして、夜中・・・ビンゴに男の霊が現れました。布団の上に覆い被さり、寝ているおばーちゃんの足元から顔の方へとじりじりと這ってくるではありませんか。
おばーちゃんは恐怖でいっぱいになりながら念仏を唱えました。そうすると男はにやりと笑いながら「無駄だよ・・・」と言ったそうです。
もちろん男の霊が去る気配はありません。殺される!おばーちゃんがそう思った時、男が一言、こう言いました。
「置いたね・・・・。」そしてその直後、男の気配は消えました。
翌日、おばーちゃんが縁側を見ると、海からは離れている場所にある旅館なのに、縁側が塩水と海草でぐちゃぐちゃだったという事です。包丁置いてなかったらどうなってたんでしょうね?